Ramsey Lewis Trio/Summer Breeze (1973)

https://youtu.be/u6j6Zk945ZY

Summer Breezeという曲は、Seals and Croftsが1972年に発表したオリジナルバージョンを元に、様々なアーティストがカバーしている名曲で、私も大好きな曲だ。

Original Version
https://youtu.be/GQQbjpomexo

中でも大ヒットしたのがThe Isley BrothersがカバーしたIsleyらしいメロウなヴァージョンだろう。私も何度聴いたか分からないほど聴き込んだ。
1974年にリリースしているので、オリジナル発表から僅か2年でのカバーとなる。
私がこの曲を初めて聴いたのも、このThe Isley Brothersヴァージョンだった。
歌詞内容の夏の夜のそよ風っぽい雰囲気とは裏腹に、熱帯夜にベッドで絡み合うエロい情景を彷彿させる歌とアレンジがオリジナルとは全く違い、まさに70年代ソウルだ。

The Isley Brothers Version
https://youtu.be/SGCaDB2hwRs

これよりも早くカバーされたヴァージョンが、発表の翌年1973年にリリースされたRay Conniffのヴァージョンである。
まるでアメリカのテレビドラマ「大草原の小さな家」のBGMで流れていそうなトラックに仕上がっている。
話はそれるが、あの作品は70年代に放送が始まり、西部開拓期に幌馬車で移動しながら自らの手で自然を切り開き、家族同士が深い愛情で支え合い暮らていくという内容のドラマは、日本でもNHKで放送され、当時国民的大人気番組となり、私の母親も夢中になってテレビに齧り付いて観ていた。苦難や波瀾万丈はあるものの、長閑に進行していたあのドラマの最終回が、まさかあんな衝撃的な結末を迎えることになるとは誰も想像していなかった事だろう。
話が脱線しすぎたので気になった方は検索してみて頂きたい。

Ray Conniff Version
https://youtu.be/U4UHPEnljO0

ちなみに、この曲は2004年に放送されたGAPのタンクトップのCMにも起用されており「この女性、タンクトップいったい何枚着てんのかな?」と思いながら見ていた。
近年では何かの映画の銃撃シーンのハイスピード映像に合わせて、The Isley BrothersヴァージョンのSummer Breezeが流れていて、印象的なシーンとして記憶に残っている(なんの映画だったかは忘れてしまった)

GAP CM
https://youtu.be/o2SGIZBnAKA

前置きが長くなったが、表題の件、ラムゼイ・ルイス・トリオがカバーしたSummer Breezeの件である。
1974に発表されたアルバム「Solar Wind」に収録され、シングルカットもされたトラックで、アルバム収録版ではアープのシンセサイザーも多用された音源となっているが、私はこのYoutubeに上がっていたヴァージョンが好きだ。
ラムゼイ・ルイス・トリオは1956年にエルディ・ヤングとアイザック・”レッド”・ホルトとトリオを組み、66年にグラミー賞を受賞している。
その後、ヤングとホルトは脱退し、後にEW&Fを結成することになるモーリス・ホワイトがドラマーとして参加することになる。
ラムゼイ・ルイスはデビューしてからほぼ毎年のようにアルバムを発表しており、74年には2枚のアルバムを発表している。
そのうちの一枚が、このSummer Breezeが収録されている「Solar Wind」だ。
ちなみにもう一枚のアルバム「Sun Godness」は、既にEW&Fを結成していたモーリス・ホワイトがプロデュースを手掛け、かつての親分をグラミー賞に導いている。

この映像の中でグルーヴィーでファンキーなベースを弾いているのは、カウント・ベイシー・オーケストラ等で活躍していたコントラバス奏者のクリーヴランド・イートン(Cleveland Eaton)だ。
このベースのグルーヴがあってこその素晴らしい演奏だと思う。
彼はベーシストとしてだけでなく、作曲者・編曲者・プロデューサーとして活動し、自身が率いるレコード会社のオーナーとしても活躍して、アラバマ・ジャズの殿堂とアラバマ音楽の殿堂として掲額されたようだ。
クリーヴランド・イートンはモーリス・ホワイトと同じタイミングでラムゼイ・ルイス・トリオのメンバーとして活動していたのであるが、この映像でドラムを叩いているのは、時代的にモーリス・ホワイトは既に脱退していたので、モーリス違いのモーリス・ジェニングス(Morris Jennings)であろう。

Youtubeの素晴らしいところは、こうして文化遺産とも言える当時の素晴らしい演奏を映像で見ることが出来ることだ。
そして好奇心の赴くままに調べれば、この時代は知識がゴロゴロ転がっているので、かなり深いところまで知る事が出来る。
素晴らしい演奏を残してくれた偉人達に心から敬意を表したいと思う。

※ラムゼイ・ルイスは昨年2022年に天に召されてしまったし、調べたところクリーヴランド・イートンも2020年没となっていた。
素晴らしい音楽を、ありがとうございました。

(Hitoshi Miyata)